〜Field日記・2004.11.11〜奈良倉山(山梨)

"山遊び" と "山登り"

  

 "山遊び"とは、山間の鄙びた温泉の近くにはきまって眺めの良い渓流があり、釣り意欲が かきたてられる。また渓流沿いには、山菜やキノコの発生もみとめられこれらへの興味も同時にかきたてられる。 このようにして私の"山遊び"が始まった。
 私の"山登り"との関わりは、ほとんど無いにひとしい。ほんとに片手をもってしても余ってしまう。
 初めて"山登り"と接点をもったのは高校2年の夏、東北地方を二週間ほどヒッチハイクでブラブラ周遊していたときに 立寄った八幡平茶臼岳なのをおぼえている。
 "山登り"といえるかどうかわからないが、記憶をたどってみるとたしか途中まではリフトに乗ってかなり中腹まで いってからの散策だった。荷物は全部リフト小屋においての手ぶらハイキングといったところか。行き交う人の"こんちわ!" という定型の挨拶に若干の戸惑いが発生したのをおぼえている。
 ワンゲルのお兄さんたちが、横幅の広いいかにも重そうなザックをいとも難なく背負っていた。狭い登山道で行き交う 人とのすれ違いのたびにみせるカニ歩き姿を、後ろからこんなことして何が楽しいのだろうかと怪訝に思っていた。

 それからしばらく"山"との関わりが途絶えた。どのぐらい途絶えたかというと、15年くらいだ。
 遅い車の免許取得で、さっそく試し運転とばかりに高速道運転に挑戦。富士山の五合目までブッ飛ばした。雲行きは あまりよくなかったがここまできたので富士登山決行とばかり手ぶらで挑んだ。案の定一時間ほどしてポツリポツリと 降りだしたので、店じまいした茶店の軒下で雨脚が遠のくのを待って下山。いくらなんでもこれは山登りといえないか・・・

 このあと"山"と接するのにまた15年を要す。"山遊び"に目覚めだしたためだ。
 渓流釣りを始め奥多摩に出かけることが多くなった。また、舘岩村に行く途中に野岩鉄道の車窓からみえた男鹿高原 という駅。ここに降立つようになって久しい。

 キノコはブナ林がすきだ、と私は考えている。ブナハリタケ、ブナシメジ、そして極め付けがナメコだ。そんなわけで ブナのある山を求め始めたのはごく自然なことだった。
 なにかの本で、東京都内にもブナ林があるという情報を得た。三頭山の中腹にあるらしい。しかし、シーズン中に あるかないかわからないブナ探しに時間を費やすのはもったいなかったので、オフシーズンの2月に行ってみた。
 雪が積もっているかもしれないのでゴム長で臨んだ。オフシーズンだったのでほとんど行き交う人もなく、登山口である 都民の森の駐車場には5台ほどの車しかみかけない。
 情報どおりブナ林があった。そこそこの太さできれいな木肌をしていた。倒木もあったが、とくにキノコの発生は 認められなかった。
 ここで調査をやめときゃよかったものを、もっと上にもすばらしいブナ林があるんじゃないかと頂上をめざしたのが運のつき、 けっきょく頂上まで登ってみたが先ほどのところにしかブナの存在は認められなかった。

 そして数少ない"山登り"が今回の奈良倉山の登頂だ。現地でいきがかりで決意した登頂だった。
 「ブナの山旅」によると、三頭山の山梨県側にもブナ林があるというので、実地調査にでかけることにした。5万分の一地図 を携え乗り合いバス終点の飯尾に到着。確認のため現地の年寄りにこの辺でブナ林を知らないか訪ねると、奈良倉山にある という。三頭山の山梨県側のブナ林のことを振ってみたが知らないというのでちょっと不安になり急遽予定を変更すること にした。

 《急遽案》
 ○奈良倉山に登れば年寄りのいっていたブナ林を確認できるかもしれないし、
  対面にある三頭山の山梨県側のブナ林の遠景も確認できるかもしれない

 

 われながら、なかなかの名案だとおもいさっそく実行。が、地元の案内板には飯尾からの登山ルートが表示されていない。 私が持ってきた地図には載っているのだが・・・。まっ、なんとかなるさと登山口とおぼしきところへいってみたら小さな 標識にしっかり、奈良倉山登山口とあるではないか。途中にも同じように小さな標識が三箇所にあった。 しかし、その先になったら赤いビニルテープになり、白いビニル紐にかわり、ついには踏み跡すらなくなってしまった。 鳥肌が立ちながらも、対面にある三頭山を見失わないよう尾根を少しずつ登っていったがどこにもブナの姿は認められない。 不安のまま進むこと登頂開始から二時間ほどしてやっと白いビニル紐に出会えた。しばらくすると山頂と松姫峠への分岐標識が ありやっとホッとできた。

 

 二時間半の努力は虚しく山頂をきわめへたりこんでしまった。唯一慰められたのは、富士山の眺望だろう。三頭山からだと この奈良倉山越しに八合目から上の部分しか見えないが、ここの展望場所からは富士吉田市の町並みがかすかに見えるほど 富士山の全景を楽しめた。
 帰りは同じルートをとった。帰りのバス時間が気になるので、あまり冒険はしないことにした。それでも麓に着いたのは 10分前だった。これを逃すと2時間ほど、ボーっとしてなくてはならないのでずいぶんと駆け足でくだったのでまた膝を いためたようだった。

 もう絶対"山登り"なんかやるもんかぁぁぁーー